エピフォン カジノは1961年に登場したギターです。ギブソン傘下に入ってからのアーチトップギターでギブソンES330とほぼ同じスペックですが、ES330がジャズで愛用されたのに対しカジノはロックンローラーに愛されました。
今回はそのカジノの秘密に迫ります。
目次
- エピフォンカジノとは
- エピフォンカジノの特徴
- エピフォンカジノのサウンド
- カジノを使用するミュージシャン
- まとめ
エピフォンカジノとは
エピフォンカジノは1961年にはエピフォン(ギブソンの子会社)から登場したアーチトップギターです。ホロウボディ構造で型番はE-230TDと付けられました。ブルースマンからロックンローラーに長く愛され、登場以来エピフォンのフラッグシップモデルとして君臨しています。
現行モデルではジョン・レノン色(ナチュラルフィニッシュ)も定番になっており主に65年モデルを踏襲した設計になっています。面白いことに小ぶりなカジノ・クーペというモデルも販売されており、バリエーションはかつてより増えています。
エピフォンカジノの特徴
カジノはシンライン(薄胴)のフルアコースティック構造を持つアーチトップギターでギブソンのES-330とほぼ同じです。主な違いはピックアップの色とヘッドストックの形です。センターブロックがないので生鳴りは大きめでセミアコと比較してやや軽量です。
ネックのジョイントはセットネック、スケールは24.75と通常の長さ、ボディはメイプルでネックはマホガニー、指版はローズウッドと一般的なスペックとなっています(トップがスプルースのモデルやメイプルネックのものも確認されています)。
カジノの特筆すべき特徴のひとつとしてネックのジョイントが16フレットでハイポジションに指が届かない設計でした。これはのちに19フレットジョイントに変わりますが現行バージョンはオリジナルに忠実に16フレットジョイントとなっています。
ハードウェアはブリッジがチューンOマチックかビグスビートレモロ(オプション)、ペグはクルーソンです。電装系は2基のP90ピックアップ、2ボリューム2トーン、ピックアップセレクターのトグルスイッチがひとつという一般的な仕様になっています。カラーは有名なものはやはりサンバーストとチェリーレッドで、のちに様々なカラーバリエーションが展開されます。
エピフォンカジノのサウンド
P90というシングルコイルピックアップとフルアコースティック構造から想像できるように非常にファットで暖かみのあるサウンドを奏でるギターです。構造上フィードバックに弱いと言われますが、フルアコはすべてフィードバックしやすいのでこれは特にカジノだけの特徴とはいえませんが、PAの発達した現在ではとくに長所でも短所でもないと考えられます。
クリーントーンは飽くまで太く、歪ませれば芯があるのにガッツがあるというこれぞロック、というサウンドを実現するギターなので非常に使いやすいものがあります。リアピックアップは意外とトレブリーなサウンドも出せますのでカントリーにも対応できますし、もちろんフロントを使えばジャズもOKとヴァーサタイルなモデルとなっています。
カジノを一躍有名にしたのはなんといってもザ・ビートルズで、まずポール・マッカートニーが使用を始め、他のメンバーもそれにならい中期ビートルズはドラマーであるリンゴ・スターを除く全員がカジノを使用していました。1966年の日本公演もカジノで行なっていました。当時のマッカートニーとカジノのコンビネーションは『タックスマン』『涙の乗車券』などのソロで確認できます。
ジョン・レノンは購入してからビートルズ解散までカジノを愛用し続け、途中でサンバーストの塗装をはがしナチュラルにリフィニッシュ、ピックガードを取り外しペグもグローバーに交換したものを使用しています。アップル社のルーフトップコンサートではそのカジノとフェンダーツインリバーブのコンビネーションが聞かれます。ジョージ・ハリスンも解散後の73年発表『ディン・ドン』のプロモーションフィルムにカジノを登場させています。
ビートルズの中期以降の音楽にカジノのサウンドが詰め込まれているのでぜひ確認してみたいところです。
カジノを使用するミュージシャン
ザ・ビートルズの影響力はすごいのか、エピフォンカジノは非常に多くのアーティストに使われています。
まず当たり前ですがジョン・レノン、ジョージ・ハリスンそしてポール・マッカートニーのビートルズ勢。それに呼応するかのようにザ・ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズやザ・ビーチ・ボーイズのカール・ウィルソン、ザ・キンクスのデイブ・デイビスというロックンロールレジェンドを筆頭に、U2のジ・エッジ、ポール・ウェラー、オアシスのノエル・ギャラガー、フー・ファイターズのデイブ・グロール、イーグルスのグレン・フライ、カントリースーパースター、ドワイト・ヨーカム。
オルタナ勢ではレディオヘッドのトム・ヨーク、ブルースマンではピーター・グリーンなど著名ロックスターで持っていない人はいないのではないかという人気ぶりです。またカジノではありませんがほぼ同じ姉妹モデル、ES-330はブルーノートのトップハードバップギタリスト、グラント・グリーンが愛用したことで有名です。
ここで特筆すべきはボーカリストでギターも弾く人と同時にリードボーカルではないギタリストが使用しているという点で、設計の保守的な部分が問題視されていないのが興味深いところです。フィードバックに弱い、ハイポジションへのアクセスが悪いなどという欠点は特に問題になっていないところに着目したいと思います。
特にU2などあの特大スタジアムライブでも使えるわけですから、まさにロックスター御用達といえましょう。
まとめ
このようにエピフォンカジノはフェンダー、ギブソン以外のブランドとして特筆すべき人気を誇ったギターといえます。弾きやすく音が良くルックスもグッドなので多少の欠点に目をつぶってもお釣りがくる素敵なモデルです。もしロックンロールスターになりたいのであれば真っ先に購入リストのトップに入れたいモデルといえるでしょう。
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