面白いことというのは往々にして起こるもので、世界で一番素晴らしいと言われたギターアンプは実はベースアンプであった…。ということで今回は誰もが憧れるフェンダーベースマンについて見ていきましょう。
目次
- フェンダーベースマンとは
- ベースマンの特徴
- ベースマンのサウンド
- その後のベースマン
- ベースマン使用の有名アーティスト
- まとめ
フェンダーベースマンとは
1950年代初頭から様々なアンプがフェンダーから発売されましたがフェンダーベースマンはその中の1つで、ベース用に開発されました。1952年に登場し他のフェンダーアンプ同様改良が徐々に加えられ外観も変わっていきました。売れ行きも良かったベースマンですがフェンダーツイードアンプの黄金期、1957年にフルモデルチェンジします。これが今われわれがベースマンというと思い出すナローパネルのツイードのベースマンです。5F6回路を搭載しておりました。翌年さらに改良されますが、この年のベースマンが「史上最高のギターアンプ」と言われています。
当時はアンプにマイクやバンジョー、ハープやラップスティールなどなんでも繋いでいたので驚くことではありませんが、ギターをベースマンに繋いだらとんでもなく良い音がしたので今ではベース用というよりギターアンプとして認知されています。
ベースマンの特徴
それでは「史上最高」1958~59年のツイード期最終ベースマンの特徴を見ていきます。ジェンセンの10インチスピーカーを4基備えた45ワットの出力を持つアンプでパネルには6つのツマミが付いています。コントロールは右からブライトボリューム、ノーマルボリューム、トレブル、バス、ミドルそしてプレゼンスになっています。入力ジャックはブライトとノーマルそれぞれ2つずつの計4つです。
プレゼンスつまみの左側にはパイロットランプ、スタンバイ/パワースイッチとヒューズが設置されています。
マルチインプットアンプなので好きなところにギターのシールドを差し込めばいいのですが(これはギターの種類にもよるのでいろいろ試してみましょう)、ノーマル1か2に挿して短いケーブルであまったノーマルインプットからブライトインプットのどちらかに接続する、いわゆるジャンパー接続も可能です。このセッティングが絶品なのでぜひ試してみてください。
ベースマンのサウンド
ベースマンのサウンドは一言で言うと骨太でブルージーです。
マスターボリュームのないアンプなので歪ませるには単にボリュームを上げることになります(このアンプは2チャンネルアンプではありません)。音を大きくすると歪むわけです。このナチュラルなオーバードライブサウンドにギタリストは魅了されました。
元々がベースアンプなので音色はすべての音域がふくよかに出てギターを選びません。適度にコンプレッションがかかったサウンドは弦を弾いた瞬間にスピーカーから音が出る感覚で弾いていて時間を忘れるほどです。
一旦歪みのポイントを決めればそこからはギタリストの腕次第となります。ギターのボリュームを開ければ歪み、絞れば美しいクリーントーンが出ます。ぎりぎり歪むところまでギターのボリュームを開ければピッキングによって歪ませたりクリーンにしたりが可能です。
オープンバック設計なので妙なこもりもなくキャビネットの頑強さにより大出力でのプレイのときの振動ないので最高のサウンドが得られます。
非常に音が大きいアンプなので歪むまでボリュームを上げるのは中々家では困難ですが、ぜひスタジオやクラブで鳴らしてみてください。クラシック・ロックのサウンドがそのまま再現されます。
その後のベースマン
ベースマンは元々ベース用アンプなのでベーシストが使うケースももちろん多く見受けられます。ですのでベーシストの方もぜひ使用してみてください。
ベースマンは60年代に入りやはりブラックフェイス化します。その後フェンダーがCBSに買収された後例のシルバーフェイスに変わるわけですが、回路的にはより歪まない方向に進みました。
また60年代後半からピギーバック(おんぶ)スタイルのベースマンが登場します。これはアンプ部分を小さなキャビネットに入れスピーカーキャビネットに乗せたもので、この頃のモデルはグランド・ファンクのマイク・ファーナーが使用しているのが確認されます。
ベースマン使用の有名アーティスト
まさに史上最高のアンプなので様々なギタリストが使っています。前述のマイク・ファーナー、CCRのジョン・フォガティ、単なるロカビリアンを超えているブライアン・セッツァー、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのマイク・キャンベルなど錚々たるギタリストが使用しています。
ニルヴァーナのカート・コバーンが大ヒット作「ネヴァーマインド」で使用したアンプもまたベースマンでした。やはり骨太なロックンロールやブルースを演奏するアーティストが多くそのサウンドがマッチするジャンルを物語っています。
面白いところではポール・マッカートニーがゲット・バックセッションでヘフナーのバイオリンベースをシルバーパネルのベースマンにつないで弾いています。
まとめ
ベース用だったのがギターアンプになってしまったフェンダーベースマンですがそのサウンドは他の何にも代えがたいものです。マーシャルアンプの第一号機も59年のベースマンの回路をコピーしたものでした。その後もこのアンプのコピーが星の数ほど登場した点でもベースマンの素晴らしさが分かると思います。
ベースマンはギター直結でスイッチを入れてぐいっとボリュームを上げてガーっと弾くようなシンプルな音楽をやりたい人には最高のチョイスだと言えます。
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