ギブソン メロディメーカーはギブソンがソリッドギターとしてレスポール以外で初めて展開したスチューデントモデルです。もちろんレスポールからの派生モデルと考えてもよいのですが、仕様を限界まで簡素にした結果、個性あふれるギターになりました。
今回はそんなメロディメーカーについて研究してみます!
目次
- ギブソンメロディメーカーとは
- メロディメーカーの特徴
- メロディメーカーのサウンド
- メロディメーカーを使用するアーティスト
- まとめ
ギブソンメロディメーカーとは
ギブソンメロディメーカーはギブソンのギターの中では実質的に2番目に登場するソリッドギターです。(正確にはレスポール・ジュニアがそれ以前に存在します)所謂ステューデントモデルのマーケットに投入されたモデルでした。
1959年に初登場し、1961年にモデルチェンジ、さらにもう一度のモデルチェンジを経て72年に製造中止になります。
もともとスチューデントモデルなので極端にネックが短い、レギュラーの3/4スケールのモデルも存在します。当時は廉価モデルということもあり使用しているプロのミュージシャンもあまりいませんでしたが70年代に入りじわじわと使われ始め、一定の人気を得ます。
そんなメロディメーカーですが、一度生産中止したモデルの再生産は行わないギブソンにしては珍しく、度々復活されるモデルです。72年の生産中止後も形を変えて再登場し、現在も現役のギターとして人気を博しています。
メロディメーカーの特徴
メロディメーカーは廉価版モデルなのでとにかく簡素なギターです。しかしながらその簡素な部分がここまでメリットになっているギターも少なく、軽くて弾きやすく、音も太く修理もしやすいという良モデルとなっています。
メロディメーカーは元々1959年に登場し、72年に製造中止になりました。ギブソンとしては珍しい薄いスラブボディ、すべてのアセンブリーをピックガードに取り付けた構造、ラップアラウンドタイプのブリッジと徹底的に簡素化されたスペックになっています。
面白いのはピックアップで、細いカバードタイプのシングルコイルになっています。このピックアップは出力が低めに設定されているためにからっとしたサウンドが特徴的で、ギブソン系のギターには度々採用されます。
ボディはマホガニー製で当初はシングルカッタウェイでした。外観はレスポール的ですがボディは薄く、その点がフラッグシップモデルであるレスポールとの大きな違いです。1961年にボディシェイプはダブルカッタウェイに変更され、ハイフレットへのアクセスが良くなります。この頃のギブソンの木材は非常に質が高く廉価版であるメロディメーカーにもホンジュラスマホガニーが使われています。軽量な木材で薄いボディデザインなので非常に軽量なモデルになりました。
ネックジョイントはセットネック、スケールは24.75インチと18.56インチがありました。指版には贅沢にハカランダが使われます。当時の木材事情が垣間見える気がしますね。ヘッドストックも簡素化されておりギブソン特有のカーブやツノが無く、まっすぐ。
ブリッジは単純なラップアラウンドのテイルピースですが、ビブロラアーム付きのモデルも存在します。ペグもシンプルな構造の3連タイプで、プラスチックのボタンになんともいえないレトロを感じます。ヴィンテージのものはかなりの確率でこのプラスチックが割れていますが、直して使用しているミュージシャンが多いようです。
尋常ならざる事態として1966年になんとボディがSGとそっくりにモデルチェンジされます。他のスペックは同様(3/4スケール版も含め)ですがペルハムブルーのカラーも含めてルックスは可愛いものとなっています。
派生モデルも色々あり、まずピックアップが2基ついたメロディメーカーDがあります。エピフォンのオリンピックも一時はメロディメーカーとまったく同じギターでした(ヘッドの形状だけ違う)。
1972年に製造中止になったメロディメーカーですが1977年にダブルカッタウェイモデルが復活しました。このモデルはチューンOマチックにブリッジが変更されるなど現代的になっています。さらに1986年にはシングルカッタウェイモデルが登場、ハンバッカーを1基搭載したモデルです。
その後もボディ形状がダブルカッタウェイのメロディメーカーに似たオールアメリカンなどを経て2007年に本格的に復活します。このモデルはオリジナルのシングルカッタウェイモデルを踏襲しており塗装はサテン塗装ですがかなりヴィンテージ感が出ている逸品です。
その後もメロディメーカーは色々な展開を見せており、フライングVタイプすら登場するという悪ノリぶりですが、初心者用としてもプロフェッショナル用途にも対応できる出来の良さは変わらず現在もその存在感を発揮しています。
メロディメーカーのサウンド
メロディメーカーはそのルックスからすると、か細くて安っぽいサウンドを奏でるギターの印象をもたれますが、実際に弾くとそのサウンドには驚かされます。
ホンジュラスマホガニーの1Pボディ、ハカランダ指板という材質の良さに加えて1ピックアップのシンプルな電装系がそのサウンドに影響していることはもちろんのこと、ギブソンが採用した細いシングルピックアップがハムバッキングとはまた違う太いサウンドを奏でてくれます。
ザ・フーに代表される70年代タイプのハードロックを演奏するのにはもってこいのサウンドで、マーシャルに直結しボリュームをぐいっと上げるとあの頃のスイートなオーバードライブサウンドが堪能できます。これはハムバッカー搭載のギブソンとは一味違うサウンドで機会があったら試奏してみてください。
当然オーバードライブ系やファズなどのエフェクターとの相性も抜群。シンプルなのでエフェクターのノリがいいんですね。
その太いサウンドはクリーントーンでも優秀で、フェンダーのハムバッカーがフェンダー系のサウンドだったのと同様こちらもシングルコイルなのにギブソンらしい音が出てくるのが興味深いです。
メロディメーカー自体は素晴らしいギターですが、やはり70年代のミュージシャンとしてはパワーが足りないと思われたのか、ハンバッキングピックアップへのリプレイスが盛んに行われました。逆に言うと改造ベースとしても面白いギターといえます(ヴィンテージモデルは改造したくありませんが……)。
メロディメーカー使用のアーティスト
メロディメーカーは元々がスチューデントモデルなので、レスポールにのように誰もが使っているわけではありませんが、相当な強者がプレイしています。
レジェンド、ゲイリー・ムーアはコロシアム時代にダブルカッタウェイのメロディメーカーをこれでもかと弾き倒しています。全盛期のゲイリーが10分以上の長尺超絶技巧ソロをばりばりメロディメーカーで弾いているのです。彼のプレイを見るとステューデントモデルはしょぼい、という価値観は吹き飛ばされるかもしれませんね。
大物ではZZ TOPのビリー・ギボンズの最初のギターがメロディメーカーでした。彼のファットで美しいオーバードライブサウンドの原点はメロディメーカーだったのです。
メロディメーカーを抱えて大ヒットを飛ばしたのがジョーン・ジェットです。小柄な女性にぴったりの軽量なギターですのでジョーンが手にするのも納得ですが、彼女はハムバッカーに改造して使っていました。彼女のシグネチャーモデルも2008年に発売されています。ゴーゴーズのジェーン・ウィードリンも愛用しるように女性人気も高いことがうかがえます。
ガンズアンドローゼスのスラッシュもまたメロディメーカーの愛好家で、気軽なジャムセッションに行くによく使っており、ショウで使っている画像もありますので相当気に入っているのでしょう。
メロディメーカーはポップあるいはロック系の人に多く愛用されていることがわかります。メロディメーカーの持つ素直で暖かみのあるサウンドが長年愛されているのはギブソンが常にこのモデルに対し気を配っている点からも伺い知れます。
まとめ
ギブソンメロディメーカーはスチューデントモデルとして価格が安いだけではなく、実戦で使える非常に優れたギターです。作りもよく個性的でサウンドも極上という傑作のひとつだといえます。現行モデルを買うもよし、60年代のヴィンテージもそれほど値段が上がっていないので狙ってみるもよしの楽しいギターといえるでしょう。
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