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〜アーチトップ・ギター専門店の実力が詰まった純国産&お手頃な逸品〜
夏、ですね。毎年相変わらずの日本のこの高温多湿な毎日に、身も心も焼けただれそう。こんな時には音楽にも、ギターサウンドにも清涼感が欲しいところ…
ということで今回はCoolでJazzyな魅力が詰まった、しかしフルアコ初心者にも最初の一本としておすすめできるブランドを紹介します。
ちょっとジャズっぽい演奏に興味がある。好きなバンドのギタリストがバイオリンみたいな穴の空いたエレキギターを持っていて、気になっている。など、どっぷりジャズを弾く予定はない方でも、ギター選びの参考にしてみてください。それでは見ていきましょう!
■Archtop Tribute 〜日本が世界に誇るアーチトップ・ギターの聖地「Walkin’」によるP.B.〜
おそらく日本でジャズギターを弾く人間で知らない人はいないであろう、東京都渋谷に店を構えるジャズギター専門店、「Walkin’(ウォーキン)」。このウォーキンが2010年秋に発表したプライベートブランドがこのアーチトップ・トリビュートです。
このブランドの素晴らしい点は、”完全日本製でプロの使用にも耐えうるクオリティの高いアーチトップ・ギター”でありながら、”エントリー・モデルにもなりうるリーズナブルな楽器”を実現している所。Gibson ES-175のスタイルをベースにしつつ、必要最小限でもっともシンプルに仕上げられた”AT101/AT101 Classic”は、純国産でありながらも税抜き¥99,800(ケース別売り)という破格としか言えない値段設定。
2010年の発表以降、様々なスタイルのラインナップが追加されており、プロにも愛用者がいるほど。
■世界的評価を受ける国内工場で生産
このブランドの製造においてウォーキンとタッグを組むのが、アーチトップの量産にかけては世界でもその実力を評価されている”寺田楽器”。
これはちょっとした裏話ですが、ジャズギターのいくつかの有名ブランド(”ダ○スト”とか”ディ・ア○ジェリ○”とか”○ドウ○キー”とか)で”日本製”となっている量産アーチトップ・ギターは、実は寺田楽器でしか作っていないらしいのです。
裏を返せば国内のアーチトップ生産おいて、それほど寺田楽器が信頼されているということ。
アーチトップ・トリビュートのギターは、指板のアール形状を整える工程からフレッティングの一連の作業において、寺田楽器で製作されている最上位機種にのみ採用されている手法と同じものが使われているそうです。それが有名ブランドの国産品よりもお安く、しかし巷の韓国・中国製アーチットップとほぼ変わらない値段で手に入るという素晴らしさです。
■日本を飛び越えて…
さらにこのウォーキンというお店、国内のみならず世界中にファンがいることでも知られています。国外のジャズギタリスト達が来日の際に立ち寄ったり、現代ジャズギターの帝王ことKurt Rosenwinkelがウォーキンの上位P.B.、”Westville”のギターを使用していることは有名な話。
そしてこれは私の個人的なエピソードになりますが、NYに住んでいた頃、とあるギタリストのライブ会場でテキサスから旅行中の若いギタリストと相席になりました。ギタリスト同士ではよくあることですがお互いの使用ギターの話になり、
テキサス君「どこのギター使ってるんだい?」
私「えーっと、日本のギターでArchtop Tributeっていうんだけど…(知らないだろうな)」
テキサス君「…あぁ!それウォーキン・ギターのことでしょ!」
私「ええ!知ってるの!?」
テキサス君「だって有名じゃん。ジャズギタリストの間であのお店は。」
私「イェイ!いいね!(世界は狭いなぁ)」
なんてことがありました。
今まで日本人でない方に私のギター(AT202MD、薄胴のフルアコモデル)を弾いていただく機会が何度かありましたが、値段を言うと皆さん驚かれました。私が購入した際は同じモデルの色違いを3本弾き比べましたが、量産ギターでありながらそれぞれ個性がありつつ、どれも高いクオリティを持っていたのが印象的です。
購入を検討される際は、ぜひお店で弾き比べてみることをおすすめします(モデルによっては入荷待ちになっているので直接問い合わせて見てください)。
さて、ここからは実際にどんなモデルがあるのか、簡単に特徴をまとめて見ていきたいと思います。
■AT101&AT102
伝統的なGibson ES-175のスタイルをベースにしながらも、極限まで実用面にこだわり無駄を廃することでロー・プライスを実現した”AT101”。そしてその101の各パーツをグレードアップし、バインディングなどの装飾をあしらった”AT102”。
アーチトップ・トリビュートのラインナップの中では最もシンプル(PUはフロントのハムバッカーのみ)でリーズナブルなモデルでありながら、ジャズギターとして必要不可欠な性能はしっかり押さえている、まさにフルアコの超定番と言えるギター。
通常モデルとは別に、PUをP-90スタイルのシングルコイルに換装した”Classic”モデルは、フルアコの温かな生鳴りと芯のあるクリアなアンプリファイズ音が楽しめる、こちらも逸品。「ジャズギター王道フルアコ最初の一本」としてこれ以上ないくらいの良選択肢ではないでしょうか。
■汎用性や取り回しやすさsを加えた”D”、”M”、”jr”モデル
アーチトップ・トリビュートのモデル名は、”AT”の後にボディサイズや形状を表す数字、数字の後にスペックの特徴を表すアルファベットが入っています。最もシンプルなスペックの102ですが、様々なプレイヤーのニーズに応えるバリエーションがラインナップされています。
まずは2PU仕様の”AT102D”(ダブルのD?)。16インチ・フル・デプスのアコースティックな鳴りはそのままに、より幅広いサウンドメイクが可能です。
通常のフル・デプスのモデルよりも約2cmほど薄い胴厚の、”ミッド・デプス”と呼ばれる仕様の”AT102M”。ボディが薄くなることによって、フルホロウでありながらより引き締まったサウンドと取り回しの良さを獲得し、特にアンプリファイズ時に優位性を発揮します。
102の仕様はそのままにサイズダウンした”AT102jr”。気軽に手に取りやすいサイズ感で、自宅での爪弾き用、旅行用、お子さん用としてはもちろん、実戦の演奏においてもショートスケール、スモールボディの優位性は様々な状況で活躍するでしょう。フルサイズのフルアコはちょっと大きい…という方にもおすすめです。
これらのモデル全てにP-90シングルコイル搭載の”Classic”仕様がある点も、選択肢の幅広さとして特筆です。
■半フルアコ?ミッド・デプス&コンターブレイシング AT202M Classic / AT202MD
アーチトップ・トリビュートのフルアコのラインナップにおいて、とりわけアンプリファイズ時のサウンド作りに優位性を持つのがこの202シリーズ。
このシリーズ最大の特徴が、薄胴のミッド・デプスに加えスノコ状の”コンターブレイシング”をボディトップに採用することで、ボディ内の空洞部分を少なくし、アコースティックな生鳴りを抑えることでエレクトリック・ユース向けの仕様になっていること。
大音量でのフルアコ使用時にはつきもののハウリングに対しても、通常のブレイシングを持つ他のモデルに比べ優位性を持ち、非常に取り回しやすくなっています。
宮之上貴昭さんおすすめの仕様を持つP-90フロント1PUの”AT202 Classic”。2PU搭載でより幅広い汎用性を持つ”AT202MD”。どちらも試してみる価値はあるでしょう。
■ジャズギター専門店ならではのこだわりのギター達
これまで紹介してきたモデルはES-175が持つ16インチ・フルサイズのデザインをベースに設計されていました。アーチトップ・トリビュートにはその発表以降、箱物専門店ウォーキンならではのこだわりが感じられる、ジャズギターファンには嬉しい様々なスタイルのモデルが追加されいます。
よりアコースティックな生鳴りを楽しみたい方には、17インチ・フルデプスのボディサイズにロングスケールの”AT350”シリーズ。
フルホロウでありながらダブルカッタウェイを持ち、コンターブレイシング仕様の”AT150DC”。
古き良きピックギターを彷彿とさせるノン・カッタウェイの”AT125”(P-90×1)と”AT50”(PU無し)。
スプルース単板削り出しトップのフルホロウ構造でありながら、レスポール・デザインをベースにしたソリッド・ギターサイズのジャズギター”ATSP”シリーズ(セミホロウモデルもあり)。
■素晴らしくリーズナブル
そしてここまで紹介した全てのモデルが10万円弱から、高くても20万円(税抜き・ケース別)に届かないという(何度も言いますが純国産です)、普段からアーチトップギターに接している者からすれば「このクオリティで、こんなに安くていいの?」としか言いようがないのです。
■予算に余裕のある方は…
そしてアーチトップ・トリビュートには特別仕様の上位モデルもラインナップされています。それがATC=Archtop Tribute Customシリーズ。
定番のES-175スタイルの上位モデル”ATC175”。
偉大なジャズ・ギタリスト、バーニー・ケッセル氏へのトリビュートモデル、”ATC350BK”。
ジャズ・ギターの開祖とも言われる伝説のギタリスト、チャーリー・クリスチャンへのトリビュートモデル、”ATC150CC”。
どれも同じスペックのものを探そうと思ったら、間違いなくこの値段では買えない素晴らしいクオリティとコストパフォーマンス。そしてジャズギターファンにとってはたまらないこだわりと愛が詰まっています。
■最後に…
いかがでしょうか?このように非常にバリエーション豊かな国産アーチトップギターを揃えるアーチトップ・トリビュート。
このブランドの最大の強みの一つが、専門店ならではのアーチトップ選びのアドバイス、メンテナンス等のアフターケアや相談が、通常の楽器店よりも専門性に優れたものになるということ。特にアーチトップ初心者でよく分からないという方にはすごく安心感を与えてくれます。
量産品ながら一本一本個性があるギターですので、ぜひお店に足を運んでじっくり選んでみてください。
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