ギター機材関連の商品説明を読んでいるとたまに全く意味の分からない言葉に遭遇します。現在流行している「バッファー」はその1つでしょう。
エフェクターの説明で「エフェクトループの前段に配置することでバッファーとしてもなんとかかんとか・・・」なんて文言見たことありませんか?最初は全く意味が分からなくて「私には関係ないかな・・・」なんて逃げてました。ところがどっこい知ってみると何のことはない、上手く使えば音作りの強い味方にもなります。
今回はこのバッファーについて見ていきたいと思います。
Contents
■バッファー=特定の機材ではない
英単語の「buffer」を引いてみると「緩衝器、緩衝物」などの訳が出てきます。何かを和らげるための装置ということですね。ではエレキギターやベースの場合これは何にあたるのでしょうか?
バッファーの話に入るためには楽器本体からアンプに送られる電気信号について知る必要があります。とはいえ、数字や記号が沢山出てくる専門的な話になるとややこしく訳が分からないので、ここでは非常にシンプルかつ重要なことだけ言います。
それは、
「ギターやベースから出力される生の電気信号はとても微弱でノイズの影響を受けやすい。この信号をハイ・インピーダンスという。」
これだけです(楽器によって例外あり、後述します)。
そしてバッファーとは、
「このハイ・インピーダンスの信号を、ノイズの影響を受けにくい安定したロー・インピーダンス信号に変換するもの。」
簡単に言うとこれだけです。
バッファーが特定の機材ではないというのは、この「インピーダンスを下げるもの」を総称してバッファーと呼ぶことからきています。ここからその点について見てみましょう。
■最も身近なバッファーはエフェクター
実はエフェクターは音を変化させるための回路内にバッファー回路を持っています(バッファアンプとも言う)。つまり一台でもエフェクターにつないだ時点で、あえてバッファー専用の機材を用意しなくてもロー・インピーダンス信号が得られる可能性があるのです。
それで万事解決すれば話が早いのですが、そうもいかないのが難しい所なのです。そこの所をこれからご説明します。
■トゥルーバイパスとバッファードバイパス
近年ハイエンドエフェクターを中心に多くのペダルで採用されているトゥルーバイパス。このトゥルーバイパス、まさに今回のバッファーと直接関係があるのです。
トゥルーバイパスは簡単に言えば、「ペダルOFF時に内部のバッファー回路を迂回するバイパス方式」のこと。つまりトゥルーバイパスのペダルは、OFFにしている限り信号がバッファーを通らないことになります。
もしギター→ペダル一台→アンプという接続順だった場合、
・ペダルON時の信号 ロー・インピーダンスでアンプへ
・ペダルOFF時の信号 ハイ・インピーダンスでアンプへ
ということになります。
つまりトゥルーバイパスのペダルでは、ON/OFFによってバッファー機能が得られないことがあるのです。
対してバッファードバイパスとは、ペダルのON/OFFに関わらず信号が常にバッファー回路を通るバイパス方式のことです。この場合、そのペダル以降の信号は常にロー・インピーダンスになります。
使用するペダルの種類やON/OFFによって、電気信号のインピーダンスが変わることがあるのですね。
■バッファーが音質を変える
「それならバッファードバイパスのペダルを先頭に置けば、常に安定したロー・インピーダンス信号が得られて万事オーケーだ」となりそうです。しかしバッファー回路に使われている部品の質によってはロー・インピーダンスだけど音質はいまいちだったり、エフェクターに繋いだだけで音が劣化してしまったりと、「バッファーさえ通ればいい」という訳ではありません。
そこでバッファー専用のペダルや質のいいバッファー回路を持つペダルを(トゥルーバイパスなら常時ONで)エフェクトループの前段に置くことで、音質の劣化を防ぎつつ安定した信号を得るという方法が有効になってきます。
■楽器本体にバッファー内蔵?
ギターやベースの中には、楽器本体にプリアンプを内臓した「アクティブ回路」仕様の楽器が存在します。このタイプの楽器の場合、本体から出る信号がすでにロー・インピーダンスになっています。
ですので、あえてバッファーを用意せずともノイズに強い安定した信号が得られます。楽器内の回路やプリアンプが、既にバッファーの機能を果たしていると言えますね。
■まとめ
ここまでお読み頂ければ、バッファーというのは必ずしも「この機材が使える!」というようなものではないことがお分かりいただけたかと思います。
ロー・インピーダンス信号の方が安定的なため、長い距離でシールドを引き回したりエフェクターを沢山繋いだりしても音質劣化が少なく、ノイズの影響を受けにくい傾向があるため、その恩恵をどうやって手に入れるか、という話になってきます。その点良質なバッファーペダルが一台あると、単純な音質向上に加え、その後にどんなペダルを繋いでも劣化を防げるので良いでしょう。
お持ちのエフェクターにもバッファーが内蔵されていると知って使うと、音質の変化も今までとは違って見えてきて面白いです。今回興味を持たれた方は、工学的・数学的な専門領域に踏み込んでみてもさらに知見が広がるでしょう。
楽しんでいただけたら幸いです。
コメント