8月も中盤を過ぎ、夜は少しづつ涼しくなってきましたがまだまだ暑いですね。こう暑いと家でわざわざアンプに繋いだり、ヘッドホンしたりして練習するのも億劫になってきます。
そんな時にフルアコが一本手元にあると、生音でもそこそこの音量で気持ちいい音で弾けていいんですよね(押さえた感じはエレキなのに)。
今回はそんな、ソリッドギターとは違う魅力を持ったフルアコギターについてみていきます。
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■「アコ」だけど「エレキ」です
フルアコとは”フル・アコースティックギター”の略です。アコースティックとありますが分類はエレキギターです。ピックアップなどの部品、配線、使う弦などはソリッドギターと大して変わりません(もちろんフルアコ向けに調整されたものもありますが)。
では何が違うかと言えば、ボディのトップ/サイド/バックと呼ばれる正面/側面/背面の板を、「ボディ内部が空洞になるように貼り合わせている」という点です。これにより、エレキギターの電子回路は搭載されているのにアコギのような「箱型」のギターになります。これがフルアコ最大の特徴です。
なのでフルアコのことをよく「箱モノ」なんて呼んだりもします。
また、トップ材をアーチ状に加工するため「アーチトップ・ギター」と呼ばれることもあります。マーチンのアコギなどはトップが平らなので「フラットトップ」なんですね。
■エレキギターの開祖はフルアコ?
ソリッドギターしか弾いたことがない方にとっては、フルアコは特殊な楽器に見えるかもしれません。しかし実は商業的に成功した最初のエレキギターは、GibsonのES-150というモデルのフルアコだったと言われています。
これは1936年に発表されたモデルです。Fenderのソリッドギターの登場が1950年前後ですので、エレキギターの歴史から言えばフルアコの方が先輩なんですね。
■フルアコの魅力とは?
フルアコにあってソリッドギターにないものは一目瞭然ですが、ボディ内部が空洞になっていることです。これによりアンプを通さない生音でも、一人で弾く分には十分な音量が得られます。これは自宅での練習時には非常にありがたい。
ではエレアコと同じではないか?そうではありません。エレアコはあくまで「アコギの生音を増幅する」のが目的ですが、フルアコは「アコギに近い構造のエレキギター」です。アンプに繋げば通常のエレキギターのように使えます。
しかしこれがギターの面白い部分ですが、同じようにピックアップで弦振動を拾っているにも関わらず、ソリッドギターにはない「空洞ボディの鳴り」が加味された音が出るのです。
音は太く暖かくなる傾向があり、このフルアコならではのアコースティック感は「エアー感」や「箱感」と呼ばれることがあります。これをソリッドギターで再現するのは非常に困難です。
また大きいサイズのモデルが多いため、弾き語りをするミュージシャンにはアコギとの持ち替え時にも違和感が少なくて良いでしょう。さてここからは、フルアコの代表的なブランドと有名な使用者について簡単に見てみましょう。
■Gibson
言わずと知れたLes PaulやSGなどの定番変形ギターでおなじみのGibsonですが、先のES-150の例にあるようにアーチトップ・ギターにおいても老舗中の老舗です。ES-175やL-5といったフルアコはジャズギタリストの間で常に定番かつ憧れのギター。
ジャズ以外では、プログレッシブ・ロックバンド、「イエス」のスティーブ・ハウがES-175を使用しています。カントリー/ロックン・ロール系のスコッティ・ムーアやマール・トラヴィスも同社のSuper400というフルアコを使用していました。
日本では、ジャズギタリストの小沼ようすけさんが近年ES-275という新しいモデルを使用していますね。
■Gretsch
カントリー/ロックン・ロール系のプレイヤーの使用で有名なGretschのギター。
古くはチェット・アトキンス(いくつかのグレッチギターモデル名は彼の曲名からきています)やビートルズのジョージ・ハリスンが使用したことでも知られています。こちらはGibsonのフルアコよりも色々なジャンル、バンドで使用されているのを見かけます。
現代のロカビリー/カントリーを代表する名手、ブライアン・セッツァーのグレッチ使いは有名ですし、シグネイチャー・モデルも出ています。白いボディにゴールドパーツがゴージャスで美しいホワイト・ファルコンは多くのロックギタリスにも愛されるフルアコ。元レッドホットチリペッパーズのジョン・フルシアンテも使用しています。
日本ではグレッチのテネシアンが、ベンジーこと浅井健一さんのトレードマークになっていますね。
■Ibanez
RGなどHR/HMのプレイヤーに愛用者が多いイメージのIbanezですが、アーチトップ開発においても歴史があります。
特に有名なのはジョージ・ベンソンとの共同開発により誕生したGBシリーズ。初代であるGB10は発売以来のロングセラーモデルとして現在も販売が続いています。また、パット・メセニーのシグネイチャーモデルであるPMシリーズも有名。
両者ともIbanezをサブギターではなく、しっかりメインギターに据えて使用していることからも、その実力が伺えます。
またArtcoreシリーズなどのレギュラーラインには比較的リーズナブルな価格のアーチトップが揃っており、これからフルアコを買ってみようという方への導入としても良い選択肢になるでしょう。
■Archtop Tribute/Westville
東京は渋谷に店を構えるアーチトップ・ギター専門店「ウォーキン」がプロデュースするプライベートブランド。長年のアーチトップの販売経験に基づいた、非常にクオリティの高いギターをリリースしています。
Archtop Tributeは「純国産品でプロユースに耐えるクオリティながら、エントリーモデルにもなりうる価格帯のギター」というコンセプトを持ちます。発表以降様々なスタイルのギターが追加されており、フルアコ初心者の最初の一本としてこれ以上ない選択肢となっています。
同店はArchtop Tributeの次にWestvilleを2013年にスタートしました。しかし既に「現代ジャズギターの帝王」ことKurt Rosenwinkelや、渡辺香津美さんなど、世界レベルでトッププレイヤーの間で使用され始めています。
世界にアピールする、日本発の素晴らしいアーチトップ・ギターとしてどんどん認知度が高まってきています。
■一度触ってみると世界が変わるかも・・・
ここまでフルアコについて簡単に見てきました。フルアコはソリッドギターとは全然違う魅力を持ったギターです。
「自分はジャズ弾かないからいいや」「ハウリングとか面倒くさいし、ボディも大きくて使いにくそう」なんて言わずにぜひ弾いてみてください。箱モノの魔力、一度ハマったら楽しいですよ。
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