フェンダームスタングは日本で非常に人気の高いモデルです。一方本国アメリカではあまりポピュラーなギターではありませんでしたがここ最近オリジナルの復刻に続き次々と派生モデルが登場し相当な盛り上がりを見せています。
今回はそんなムスタングについて見ていきましょう。
目次
- ムスタングとは
- ムスタングの特徴
- ムスタングのサウンドと愛用するプレイヤー
- まとめ
ムスタングとは
fender mustang、正式には「マスタング」と発音されます。1964年にデュオソニック/ミュージックマスターのベースとなるギターとして登場しました。2ピックアップ・ダイナミックトレモロ・ショートスケール・ローズウッド指板といった基本をおさえたスペックでスチューデントモデルの位置づけでした。
特に本国では人気は出ませんでしたが後にカルトギターとしてその良さが再発見されます。逆に日本ではポピュラーな存在であり続けています。1982年まで製造されますがスチューデントモデルをスクワイアブランドに移管するため生産中止になりました。
しかしながら日本ではその人気のため早い時期から何度となくリイシューが登場し、21世紀に入ってから本国でも復刻、現在もオフセットモデルとしてカタログのレギュラー入りを果たしています。また派生モデルも多数登場しています。
ムスタングの特徴
ネックは元々はデュオソニックなどと同様に22.5インチと24インチのネックを選ぶことができましたが24インチが主流で現在も24インチとなっています。メイプルにローズウッド指板というスペックは現在も変わっていません。
ボディ材ですがアルダー/アッシュ/ポプラとなっています。70年代のアッシュムスタングは結構重たいですが現行モデルは軽量になっています。
ピックアップはシングル2基でピックアップセレクターはありません。代わりにピックアップの手前にスライドスイッチがありこれでそれぞれのピックアップのオン/オフを切り替えます。面白い点としてフロントとリアのピックアップを逆走にしてフェイズアウトしたサウンドが出せ、これは当時としては画期的でした。ちなみにスイッチは3点スイッチで真ん中がオフ、両端がオンとなっています。
ムスタングの最大の特徴がそのダイナミックトレモロユニットで、これはジャズマスターの発展形ともいえますが、非常に強力なアーミングを実現しています。実際にアームを触るとわかりますがまさにダイナミック。調整が中々難しいユニットですが一度場所を決めるとアグレッシブな演奏が可能となっています。
ちなみにスチューデントモデルでトレモロを搭載しているのはフェンダーではムスタングが初めてでした。
様々なカラーが発売されておりこれもまたムスタングが愛される特徴となっています。特に60年から登場したボディとヘッドストックが同じ色に塗装されている、いわゆるマッチングヘッドのモデルは見栄えもよろしいです。70年代にはサンバーストやナチュラルフィニッシュのような大人っぽいバリエーションも登場しています。
ムスタングのサウンドと愛用するプレイヤー
どういう設計思想なのかは今では知る由もありませんが、フェンダームスタングはその可愛らしいルックスとは裏腹に非常に中音域が豊かな、非常に粗暴なサウンドを出してきます。独特なトーンとさらに独特なトレモロユニットが相まって扱うのが非常に難しいギターです。そういう意味では割りと端正なイメージのあるフェンダーギターの異端児といえます。
しかしながらいったんこのじゃじゃ馬を飼いならしてしまえばこちらのものでショートスケールの弾きやすさ、アームの感度と操作性、多岐にわたるサウンドがプレイヤーの良き相棒となってくれることは間違いありません。
サーフからハードロック、ソウルからプログレまで例によっていかなるジャンルも対応可能なムスタングですがアメリカでは人気がなかったのであまり使っているプレイヤーはいませんでした。
有名なところではトッド・ラングレンがユートピア時代に70年代の黒いムスタングを弾き倒しています。同じく技巧派としてはアイズレーブラザーズ時代のジミ・ヘンドリクス、キング・クリムゾンのエイドリアン・ブリューも愛用者です。
クラシック・ロック勢とは別に70年代以降のカルト的人気が出た後のプレイヤーですとサーストン・ムーア、カート・コバーン、デヴィッド・バーマン、オルタナ・カントリーのデイブ・アルヴィンなどが挙げられます。
またその小さなボディから女性アーティストも愛用しておりノラ・ジョーンズ(赤いムスタング)やPJハーヴェイなどが使っているのが確認できます。
しかし何といっても世界で一番ムスタングを愛用し有名にさせたミュージシャンは日本のCharでしょう。70年代に彼が登場しテレビで颯爽とムスタングで凄まじいギターソロを弾いていたのを見て多くの人がしびれたはずです。彼によって日本でのムスタング人気は続きそれがひいては本国での復興につながります。
面白いところでは「けいおん!」の中野梓がムスタングを使用しておりこれもまたギターブームを引き起こしたことは記憶にあたらしいところです。彼女のギターはキャンディアップルレッドのマッチングヘッドのタイプですのでおそらくは69年モデルのリイシューと推測されます。
まとめ
ムスタングは元々は低価格のスチューデントモデルとして登場しましたが機能を全部入りにした結果現在までも愛用者が後を絶たない定番になりました。確かに使いこなすのは大変ですが強力なダイナミックトレモロ、ステージアクションもOKな小ぶりな軽量ボディ、弾きやすいショートスケールとロックスターには必要な武器がすべて揃った最高の相棒となることでしょう。
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