長いフェンダーギターの歴史の中でもひときわ興味深いギターがあります。カリフォルニアの地名から名前を取ったその名もフェンダーコロナド。今回はそんなレアなギターをご紹介します。
目次
- コロナドとは
- コロナドの特徴
- コロナドのサウンド
- コロナドを使う有名アーティスト
- まとめ
コロナドとは
隣の芝は青く見えるのか、1960年代半ば以降フェンダーはギブソン、ギブソンはフェンダーのようなギターを作り始めます。その中でフェンダーから登場したのがこのコロナドです。このギターはダブルカッタウェイのシンライン・フルアコースティック、1もしくは2基のシングルピックアップ。もちろんfホールがつけられ、2ピックアップモデルは2ボリューム2トーンとトグルスイッチによるピックアップセレクトなどギブソンES-330(エピフォン・カジノ)を意識したギターとなっております。
当時はアーチトップギターの人気は高かったようですが、とにもかくにも驚きなのはフェンダーがフルアコを発売したという点です。1966年に発売されたコロナドは残念ながら1972年には発売中止となる短命なギターです。モデルは大きく分けて6弦・12弦そしてベースバージョンがありました。そのような知る人ぞ知るコロナドですがなんと2013年に復活を果たします。リバイバルブームに上手くのった形でしょうか。
コロナドの特徴
フェンダー初のフルアコであったコロナドはギブソンやリッケンバッカーで働いていたロジャー・ロスメイズルの手によりデザインされました。左右対称かつ下部が左右に膨らんだホロウボディに特徴的なピックアップはグレッチを思わせる仕様。ピックアップセレクターはブレードではなくトグルスイッチが使われ、つまみは4つに。さらにストラトキャスターと同じ形のヘッドストックにfホールをあけたフルアコなのにボルトオンネック仕様という、ギブソン・グレッチのギターをかけ合わせてフェンダーのネックをつけたかのような、かなり不思議な雰囲気のギターです。
ボディは薄く木材はレギュラーではメイプルですがブナのモデルも存在しました。スケールは25.5、ネックはメイプルで指板はローズウッド、ピックアップはグレッチで採用されて一躍有名になったディアルモンドを使用しています。ブリッジはチューンオーマチックとブランコテールピース。オプションでトレモロユニットもありました。
コロナドIが1ピックアップモデル、コロナドIIが2ピックアップモデルです。重量はフルアコとしてはそれほど軽くはありません。
コロナドのサウンド
ディアルモンドのシングルコイルとフルアコ構造・ボルトオンネックによりコロナドのサウンドはパリッとしていながら低音もふくよかという魅力的なものになっています。フェンダー的な色は非常に濃く、例えて言えばテレキャスターの音がするフルアコ、といったところでしょうか。
箱モノの宿命ですが、コロナドはその構造上ハウリングに弱いという欠点があります。またハイフレットのアクセスがあまりよくないのでジャズギタリストからの人気はあまり高くなかったようです。しかしながら材も含めて徹底的にゴージャスに作られているためサウンドは非常にエレガント。
現行モデルは2ピックアップかつピックアップがフィデリトロンというハムバッカーに変更されており、オリジナルと比較して格段にフィードバックには強くなっています。
コロナドを使用するアーティスト
Fender Coronado を使用するアーティストとしてはザ・キンクスのデイブ・デイビスが60年代のテレビ収録で使用しているのが確認できます。彼はフェンダーのアコースティックギターやギブソンのフライングVも使用しており、当時としては珍しい楽器のチョイスをしています。
また有名どころではエルヴィス・プレスリーが映画「スピードウェイ」のラストシーンで歌っているときに弾いているのがコロナドIIです。
この手のビザール系はやはり再評価されるもので、時代は飛んで1990年代に入りフレーミング・リップスやサンプリングを積極的に取り入れたクールなサウンドで一世を風靡したソウル・コフィングが使用しています。ヨ・ラ・テンゴのアイラ・キャプランやテキサス・ブルースのジミー・ヴォーンなども愛用しておりそのシャープなサウンドを堪能できます。
まとめ
コロナドはヴィンテージモデルのタマ数が少ないので入手は中々難しいものがあります。復刻版はネックやブリッジのスペックが現代的になり、なんと構造もセンターブロックを入れたセミアコになり(フィードバック対策と思われます)、新しいピックアップがハンバッカーなのに昔ながらの高音域を実現しているという改良が施されています。そのため非常に強力ギターとして蘇りグランジからジャズ、はたまたカントリーまでカバーできる柔軟性の高い1本となっています。
そのビザールなルックスも含め人とは違った個性を出したいミュージシャンが検討するべきギターの1つといえましょう。
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