70年代に入りフェンダーは時代の要請もあり営業サイドからハムバッカー搭載のモデルの開発を要求され市場に投入することになりました。興味深いのはハムバッカーを搭載したモデルはほぼテレキャスターだった点で今回はそのうちのひとつ、テレキャスターデラックスについて見ていきましょう。
目次
- テレキャスターデラックスとは
- テレキャスターデラックスの特徴
- テレキャスターデラックスのサウンドと使用ミュージシャン
- まとめ
テレキャスターデラックスとは
60年代後半に入りロックがよりハードになるにつれてフェンダーはハムバッカー搭載のギター、いわゆるギブソン寄りの製品を出す必要性が出てきました。フェンダーはギブソンでハムバッカーを設計したセス・ラバーを招聘しワイドレンジハムバッカーというハムバッキングピックアップを製造、4つのモデルに搭載しました。そのうち3つがテレキャスター、もう1つはスターキャスターでした。
このTelecaster Deluxeはテレキャスターのラインナップで一番高級なギターとしてマーケティングされました。ハムバッカー搭載のテレキャスターはデラックス、シンラインそしてカスタムがありますがいずれも売れ行きはさほどでもなくすべて81年あたりで生産が中止となります。
しかしながら1990年代に入りイギリスのミュージシャンを中心にその良さが再発見され様々な復刻がなされ現在でもレギュラーライン入りしています。
テレキャスターデラックスの特徴
まず目を引くのがヘッドストックです。テレキャスターのヘッドストックは通常細く小さいデザインですが、デラックスのそれはまるでストラトキャスターのような形状をしています。しかもラージヘッドと呼ばれる大きめのデザインなので相当なインパクトがあります。
ルックス面でさらに驚くのは2基搭載されたワイドレンジハムバッカーで、これも中々のインパクトがあります。ネックは3点止めでマイクロティルトアジャストメントと呼ばれる機構を搭載しており、リイシューである現行モデルも当然この部分を再現しています。
ピックガードもトグルスイッチおよびコントロールの都合上大型化しています。前から見るとあまり普通のテレキャスターと形は変わりませんが裏面はストラトキャスターのようにやや削られていて弾きやすさに貢献しています。ボディの材はアルダーおよびアッシュでかなりの重量級ギターとなっています。
ネックはストラトキャスターとほぼ同じの25.5インチ、指板はメイプルです。ひとつ面白いのはやはりハードロックシーンを意識したのかフレットが当時のストラトキャスターや他のテレキャスターよりも太くなっています。これはリードプレイをかなり意識した変更です。
ブリッジはハードテイルブリッジで固定されていましたがストラト同様のトレモロブリッジモデルも存在します。これはオプションで選択できましたが復刻版でもこの仕様のモデルがありました。
コントロール系はピックアップセレクターが3点のトグルスイッチ、コントロール系は2ボリューム2トーンでトップハットノブを採用しています。視認性は非常に良くなっています。このコントロールはまさにギブソン系のギターを踏襲しておりかなり意識していることがわかります。
色は黒・ナチュラル・サンバーストが主で茶色も確認できます。リイシュー版ではFSR(Factory Special Run)で色々なカラーが発売されています。
テレキャスターデラックスのサウンドと使用ミュージシャン
テレキャスターデラックスはまさに「デラックス」な作りでボディがただの板のような通常のテレキャスターとは一線を画す高級な仕上がりになっています。サウンドのほうもワイドレンジ2基とハードレイルブリッジというまさにこれ以上はないであろうというハードロッキンなものになっています。
フェンダーワイドレンジハムバッカーは面白いことにフェンダーが望んだようなギブソン的なサウンドではなくギブソンのハムとフェンダーのシングルコイルの中間のようなサウンドを奏でるためテレキャスターとしてのアイデンティティを失うことなくハイパワー化に成功しているといえます。
デラックスのサウンドは確かに予想する音よりもトレブリーでカラっとしている印象です。リイシューマンはオリジナルよりもややファットな印象となっていますが本質は変わらずフェンダーのサウンドが感じられるギターです。
さてこの扱いやすいハードロック仕様のテレキャスターデラックスですが、まず使用ミュージシャンとして筆頭に挙げたいのは生けるレジェンド、激熱のブルースマン、バディ・ガイです。バディは存命のブルースレジェンドの一人ですがあの剛腕でテレキャスターデラックスをかっこよく弾いています甘すぎず痛すぎずのぶっといサウンドが心にしみます。
一方オルタナティブ系にも人気がありレディオヘッドのトム・ヨークを筆頭にオアシスのノエル・ギャラガー、ブラーのグレアム・コクソン、スマッシング・パンプキンズのジェイムズ・イハなどそうそうたるメンツがデラックスをプレイしています。同時期に登場したテレキャスターカスタムとはちがいやはり2ハムが使いやすいのか著名ミュージシャンが多数愛用しています。
まとめ
テレキャスターデラックスはその名に恥じぬ高級なギターですが、オルタナ人気に加えFSRでポップな色彩のものが登場するなどサブカル的な展開も似合うギターとなっています。もちろんバリバリでブルースを弾くのもかっこいいですが、ここまでシューゲイザーが似合うギターも中々ないでしょう。
テレキャスターのボディ、ストラトのようなヘッドそして2つのハムバッカーというルックスとサウンドが個性を重んじるアーティストにうってつけのモデルといえましょう。
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