オーストリアは世界に知られる音楽の国です。
そこで生まれたピアノメーカーこそ
ベーゼンドルファー(BOSENDORFER)です。
創業から180年で、まだ生産台数が5万台程度と生産台数の少なさから、
幻の名器とも言われました。
色々な輸入ピアノの調律を行う有名な調律師さんなども、
「最後はベーゼンドルファーに魅了される方が多い」と言われるほど、
他のメーカーのピアノにはない、素晴らしい音を奏でます。
その柔らかい音は、「ウィンナートーン」を今に伝える「ウィーンの宝」とも言われ、
ベヒシュタイン、スタインウェイとともにベーゼンドルファーは、
世界3大ピアノメーカーと呼ばれています。
今回はそんなベーゼンドルファーについて説明します。
ベーゼンドルファーの概要
ベーゼンドルファーは、イグナーツ・ベーゼンドルファーが
1828年にオーストリアのウィーンで創業を始めたピアノ製造会社です。
当時のウィーンは数百年に渡り首都であったため、
ヨーロッパ全域から多くのものや思想、
さらに芸術が集まる「太陽の沈むことなき帝国」と呼ばれていました。
現代でも、音楽の都として親しまれていることから、
その発展が分かります。
そのこともあり、様々な国の帝室や王室の御用達となったり、
博覧会で入賞したりして、ベーゼンドルファーの名を広めてきました。
第二次世界大戦後に、
経営難となってアメリカの企業に買収されたこともありましたが、
2002年にオーストリアの銀行に経営権が移り、母国へ復帰しました。
しかし、2007年に再び経営難になった後、
2008年に日本の王手ピアノメーカーであるヤマハの子会社となりました。
ベーゼンドルファーの特徴
ベーゼンドルファーの工場はウィーン郊外に置かれており、
ウィーナー・ノイシュタット工場でピアノが製造されています。
木材には、南チロルのフィエメの谷で採れるスプルース、
ブナ、カエデを約5年以上乾燥させた木を使用しています。
さらに、ピアノの製造には1年以上の約62週間、
調律・整音には約8週間というとても長い歳月が費やされています。
フレームについても、屋外に半年以上置くことで歪みを取り除いています。
響板とフレームには独自の製法を使用しており、多彩な音色を実現しています。
ベーゼンドルファーと音楽家たち
ベーゼンドルファーのピアノは、
多くの作曲家やピアニストの助言によって改良が重ねられ、
今の形となりました。
「ウィンナートーン」と呼ばれるその美しい音色を生み出すピアノは、
フランツ・リストの激しい演奏にも耐えることが出来ました。
ベーゼンドルファーのピアノを愛用していた一人として、
ドイツのピアニストであるヴィルヘルム・バックハウスが有名です。
また、ジャズピアニストでは、オスカー・ピーターソンが知られています。
さらに、アンドラーシュ・シフやパウル・バドゥラ=スコダ、
イェルク・デームスやフリードリヒ・グルダ、
ヴァレンティーナ・リシッツァやスヴャトスラフ・リヒテルも
ベーゼンドルファーを好んでいます。
さらに、ベーゼンドルファーのピアノを使用したレコーディングも
数多く行われています。
日本人でも、久元祐子や井上ゆかり、大井和郎や梯剛之、加古隆、
村松健、木住野佳子、藤井一興や藤原由紀乃、松本俊明や三柴理、
桜庭統など多くの奏者がレコーディングに使用しています。
ベーゼンドルファーとコンクール
ベーゼンドルファーのピアノは、
1980年までショパン国際ピアノコンクールの公式ピアノとして採用されていました。
しかし、日本のヤマハとカワイ、さらにファツィオリが採用されたことから、
ベーゼンドルファーのピアノは除外されてしまいました。
一方、ウィーンで開催されるベートヴェン国際ピアノコンクールで
使用されるピアノは今でも全てベーゼンドルファーのものだけと決められています。
ベーゼンドルファーのピアノを演奏するなら
ベーゼンドルファーのピアノは、
ベーゼンドルファー東京や全国の特約店で販売されています。
展示店は、東京・大阪・愛知の三大首都圏に分布しています。
新品のベーゼンドルファーは、
スタンダードモデルのグランドピアノで
1000万円から2280万円程度となっています。
スタンダードモデルのアップライトピアノは
500万円程度で購入出来ます。
他にも、時代や人物に合わせたスペシャルエディションモデルや、
アウディモデルやポルシェモデルを含むデザインモデル、
リミテッドエディションモデルなどが用意されており、
豊富なラインナップとなっています。
ベーゼンドルファーの中古ピアノは、
少量生産であることから希少価値が高いために、
あまり値が下がりません。
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